クラスターとは特定分野の企業、大学・研究機関、法律事務所、会計事務所などのビジネス組織が一定して集積して存在する状態のことを指します。
産業クラスターとは元々、経済地理学における「産業集積」という概念を発展させたもので、その起源はマーシャルという学者に見られると言われます。
ポーター氏は産業クラスターについて、企業と機関が地理的に近接した状態を定義されているようにみえます、「同業他社」だけでなく、供給業者・関連企業、金融機関、研究機関、大学までをもクラスターを構成する要素としています。
クラスターはある特定分野における突出した成功に必要な条件であり、各種の国、地域、都市圏での産業の成功の要因にクラスターの存在が指摘されています。
産業集積理論における古い資源要因による立地、市場要因による立地が生む集積ではなく、知的基盤社会での新たな集積の形態として、クラスターは注目されています。
クラスターがイノベーションを起こすにあたって、まずクラスターの集団で仕事をしているか、それとも単独で仕事を行なっているかで企業の成果が違ってきます。また別業種間との情報の交換や業務の補完ができているか、技術、マーケティング、顧客ニーズなどの情報の共有ができているか、いないかでイノベーションの発生が違います。
そしてポーター氏はダイヤモンド・モデルというフレームワークを提示します。 ポーター氏は国と産業との関係を示すフレームワークとして、このクラスターの分析でダイヤモンドモデルというフレームワークを示しました。
ポーター氏はダイヤモンドモデルのフレームワークにおいて、特定産業における競争優位が主に「企業戦略と競争状態」、「要素条件」、「需要条件」、「関連・支援産業」の4つのファクターから生み出されると説明しています。
これはクラスター内においてイノベーションを生む環境が整っているかどうかのことです。
「企業戦略と競争の状態」とは企業間の競争があり、そのために独自化やイノベーションが起こる状態があるかどうかです。
「要素条件」とは自然資源にはじまり、人的な資源、資本、物的インフラ、行政インフラ、情報インフラ、科学技術インフラなどの環境条件が整っているかどうかです。
「需要条件」とは高度で要求水準の高い顧客がいるかどうかや、グローバルに展開するような例外的な特殊な需要もあるかどうかです。
「関連・支援産業」とは周りに複数の企業・機関が存在し、相互に影響し合っているかを指します。
これらのイノベーションを生む環境については、東京Vは首都・東京に近接し、優秀なブレーン集団とも関係があり、恵まれた環境にあると考えられます。
「企業戦略と競争状態」については、周囲にサッカー・クラブが複数あり競争状態にあること。野球、バスケ、ラグビー、バレーなどのチームとも切磋琢磨し、それぞれとの「違い」を意識できる環境にあるといえます。
「要素条件」については人の多い市場が近くにあり「東京」のブランドとともに恵まれたスタジアムがあり、交通アクセスもいい、行政の支援もあります。今後はこれらの連携が求められるでしょう。
「需要条件」についてはアンケートなどで顧客のニーズに合わせて市場調査、商圏調査が必要かもしれません。
「関連・支援産業」としては、「東京ヴェルディ」を構成する他クラブ・アスリートとの連携は強みであるでしょうし、またコンサル、銀行、行政、サポート企業との連携によるイノベーションが待たれるでしょう。
これらの環境を東京Vは生かすべきではないでしょうか。
日本においては内閣府をはじめとする各公的機関が各産業の基盤としてクラスターの集積を唱え、地方や特定地域での実践の支援をしています。それらの中から新しいイノベーションが生まれることが望まれています。
海外の各国においてもクラスターの形成が計画され、成果をあげています。
日本におけるクラスターの現状とイノベーションが生まれているかどうかについては言及しませんが、今後の展開が期待されます。
サッカー・クラブの戦略としても、これらのポーター氏の理論を用いたマーケティングを行うことを一層考えるべきでないでしょうか。